Vegetarian Research−Abstract


Vegetarian Research Vol. 23 (2022), pp. 1-7

ベジタリアン・ヴィーガン食品の国際的基準(カテゴリーや認証)と JAS 制定

垣本 充・橋本 晃一・高井 明徳

ベジタリアン・ヴィーガン食の宗教食からライフスタ イル食への変遷の歴史とその国際基準(カテゴリー、認 証)、ドイツ、英国、日本のベジタリアンとヴィーガン の現状。2022年に制定された日本政府によるベジタリ アン・ヴィーガン食品の公的な認証・JAS 制定の経緯 について解説した。

キーワード:ベジタリアン・ヴィーガン食・変遷の歴史・国際的基準・JAS 制定


Vegetarian Research Vol. 23 (2022), pp. 9-11

ベジタリアンのためのマイクロスケール実験
−食材を扱う化学実験におけるヘンプミルクを用いた豆腐様食品作り−


佐藤 陽子・太田 尚孝

本研究では、高等学校の化学教育の現場で活用可能な 「手軽に入手できるヘンプシード」を用いた豆腐様食 品作りを試みた。結果として、ヘンプミルクとにがり から成る小型の豆腐様食品を作ることが可能であった。 この実験は食物アレルギーを抱えていないベジタリア ンの生徒が実施可能だと考えられる

キーワード:豆腐・マイクロスケール法・ベジタリアン・ヘンプミルク・豆腐様食品


Vegetarian Research Vol. 23 (2022), pp. 13-16

植物由来のビタミン B12供給源〜のり〜 論争の現状

仲本 桂子

ビタミン B12(以後、B12)は、一般的に植物性食品に 含まれないため、動物性食品を摂らないヴィーガン食 では不足することが懸念される。そのような状況下で、 のりが植物性食品由来のビタミン B12 供給源として注 目され研究が実施されている。のりは B12 供給源とし て有効だ、という報告がある一方で、B12不足を示す研 究報告がある。これら研究報告の矛盾点を解明するた め、より高度な人介入試験の実施が求められる。

キーワード:ビタミン B12・ビタミン B12供給源・のり・ヴィーガン


Vegetarian Research Vol. 22 (2021), pp. 1-6

植物由来の食生活が慢性腎臓病に与える正と負の影響

永井 恵

近年の食生活の欧米化により、日本では植物由来の食物摂取割合が減少傾向にある。 一方で、環境、動物愛護など理由からベジタリアン(菜食主義者)が存在することも事実である。 その中で健康の獲得を目的とする場合もある。 植物由来の食生活は、20世紀から疫学的に心筋梗塞や脳卒中に代表される心血管病のリスクを低減することが知られてきた。 腎臓は体液の恒常性維持や老廃物の除去を担う。 腎臓の機能が徐々に低下する「慢性腎臓病」は日本国民の8人に1人とされており、 高齢化や生活習慣病の有病率上昇に伴い増加する可能性はある。 慢性腎臓病は、致死的な腎不全に至るリスクに加えて、心血管病の独立した危険因子であり、その進行抑制は重要である。 近年、植物由来の食生活が慢性腎臓病の発症および進行を抑制する研究結果が次々と報告されている。 一方で、末期腎不全や身体的に脆弱な高齢者の病態を考えると、過剰な蛋白制限やカリウム摂取をした場合、 やせの進行、転倒や心停止による死亡の可能性も否定できない。 腎臓病における植物性の食生活に関するエビデンスを元に、診療指針の作成も望まれる。 少なくとも慢性腎臓病の進行例においては腎臓専門医や栄養士の助言のもとに栄養管理をすることが望ましい。

キーワード:慢性腎臓病・カリウム・植物性タンパク


Vegetarian Research Vol. 22 (2021), pp. 7-12

各種茶及び洗口剤の口腔細菌に対する殺菌・抗菌効果

高井明徳

本研究において、5種類の茶(緑茶、紅茶、ほうじ茶、ジャスミン茶、麦茶)、4種類の洗口剤の口腔細菌に対する殺菌・抗菌効果が調べられた 。口腔細菌液は各種茶、洗口液で2分間処理され、血液寒天培地で好気的に培養され、生じたコロニー数を算定した。 その結果、増殖可能な細菌の生残率は、緑茶、紅茶、ほうじ茶で約55%、ジャスミン茶で約65%、麦茶で100%以上であった。 イソジン及びアルコール殺菌タイプの洗口剤の生残率はほぼ0%であった。 本研究結果から、麦茶を除く各種茶は、口腔細菌の殺菌・抗菌効果を有し、含嗽に効果的であることが示唆された。

キーワード:含嗽液・緑茶・紅茶・洗口剤・口腔細菌・殺菌・抗菌効果


Vegetarian Research Vol. 22 (2021), pp. 13-15

マイクロスケール法による新しい小麦アレルギー対応型断層モデルの実験

佐藤 陽子・太田 尚孝

本研究では、小麦アレルギーの児童・生徒が扱うことが可能な小型の断層モデルの開発を試みた。 結果として、ムラサキイモ粉とスキムミルクから成る小型の断層モデルと、 ムラサキイモ粉とキヌア粉から成る小型の断層モデルを作ることが可能であった。 これらは、小麦アレルギーを抱えたべジアリアンの児童・生徒に有益だと考えられる。

キーワード:断層モデル・マイクロスケール法・小麦アレルギー・ベジタリアン


Vegetarian Research Vol. 21 (2020), pp. 1-8

菜食の利点と注意事項

福永健治

菜食主義者は、タンパク質、いくつかのビタミン、ミネラルおよびn-3系高度不飽和脂肪酸の摂取が不足していると指摘されることがよくある。しかし、菜食主義者は植物性食品から摂取すべき栄養素に適した食品を選択することもでき、多くの場合、健康を効果的に改善および維持できる。菜食主義者の食事は、心血管疾患や悪性新生物などの生活習慣病の有病率の低下につながるが、一方で偏った見方もある。一部の人々は、植物性食品が体と環境に適していること、そして動物性食品は環境に悪く、不健康であると盲目的に信じて、ポピュリズムに流されている。菜食にはさまざまな背景がある。健康のために菜食を実践する場合は、菜食に興味を持ち、栄養学と食品科学についてより深く理解し、科学的な視点を持っている必要がある。 このレビューでは、菜食主義の現状と、菜食主義者が健康的な菜食主義の食事療法を実践するために不可欠な栄養素について概説する。

キーワード菜食主義・健康・植物性食品・栄養素・利益・生活習慣病


Vegetarian Research Vol. 21 (2020), pp. 9-12

含嗽剤としての緑茶と紅茶の口腔内細菌に対する殺菌・抗菌効果

高井明徳

本研究において、緑茶と紅茶の口腔内細菌に対する殺菌・抗菌効果を寒天培地による培養法を用いて調べた。 蒸留水での含嗽により得られた口腔内細菌液と緑茶と紅茶をそれぞれ1:9の割合で混合して、2分間放置した。 これらの液を希釈して、寒天培地で培養した結果、増殖可能な細菌の生残率は緑茶で50.7%、紅茶では55.5%で、 ほぼ50%の殺菌・抗菌効果を示した。本研究結果から、緑茶と紅茶は口腔内細菌の殺菌・抗菌効果を有す含嗽液として 効果的であることが示された。

キーワード:含嗽液・緑茶・紅茶・口腔内細菌・殺菌・抗菌効果


Vegetarian Research Vol. 21 (2020), pp. 13-15

ベジタリアニズムとヒトと動物の福祉

橋本晃一

昨今、健康、環境、動物など、さまざまな視点から、ベジタリアン・ヴィーガン、または、 菜食へ移行する人たちが世界的に増加していると言われている。 国連報告書やNatureの研究や、菜食への移行のニュースを通じて、 ベジタリアニズムと人と動物の福祉の関係などについて考察する。 ヴィーガンの国連平和大使である動物学者のJane Goodallは、「気候変動もパンデミックも、 人間が動物の住処を破壊したり、動物を売り買いすることなどが要因であり、 動物に対する思いやりを持つ事が重要である」との見解を発表している。

キーワード:社会福祉・動物福祉・ウェルビーイング・マインドフルネス・サスティナビリティ