Vegetarian Research−Abstract


Vegetarian Research Vol. 22 (2021), pp. 1-6

植物由来の食生活が慢性腎臓病に与える正と負の影響

永井 恵

近年の食生活の欧米化により、日本では植物由来の食物摂取割合が減少傾向にある。 一方で、環境、動物愛護など理由からベジタリアン(菜食主義者)が存在することも事実である。 その中で健康の獲得を目的とする場合もある。 植物由来の食生活は、20世紀から疫学的に心筋梗塞や脳卒中に代表される心血管病のリスクを低減することが知られてきた。 腎臓は体液の恒常性維持や老廃物の除去を担う。 腎臓の機能が徐々に低下する「慢性腎臓病」は日本国民の8人に1人とされており、 高齢化や生活習慣病の有病率上昇に伴い増加する可能性はある。 慢性腎臓病は、致死的な腎不全に至るリスクに加えて、心血管病の独立した危険因子であり、その進行抑制は重要である。 近年、植物由来の食生活が慢性腎臓病の発症および進行を抑制する研究結果が次々と報告されている。 一方で、末期腎不全や身体的に脆弱な高齢者の病態を考えると、過剰な蛋白制限やカリウム摂取をした場合、 やせの進行、転倒や心停止による死亡の可能性も否定できない。 腎臓病における植物性の食生活に関するエビデンスを元に、診療指針の作成も望まれる。 少なくとも慢性腎臓病の進行例においては腎臓専門医や栄養士の助言のもとに栄養管理をすることが望ましい。

キーワード:慢性腎臓病・カリウム・植物性タンパク


Vegetarian Research Vol. 22 (2021), pp. 7-12

各種茶及び洗口剤の口腔細菌に対する殺菌・抗菌効果査

高井明徳

本研究において、5種類の茶(緑茶、紅茶、ほうじ茶、ジャスミン茶、麦茶)、4種類の洗口剤の口腔細菌に対する殺菌・抗菌効果が調べられた 。口腔細菌液は各種茶、洗口液で2分間処理され、血液寒天培地で好気的に培養され、生じたコロニー数を算定した。 その結果、増殖可能な細菌の生残率は、緑茶、紅茶、ほうじ茶で約55%、ジャスミン茶で約65%、麦茶で100%以上であった。 イソジン及びアルコール殺菌タイプの洗口剤の生残率はほぼ0%であった。 本研究結果から、麦茶を除く各種茶は、口腔細菌の殺菌・抗菌効果を有し、含嗽に効果的であることが示唆された。

キーワード:含嗽液・緑茶・紅茶・洗口剤・口腔細菌・殺菌・抗菌効果


Vegetarian Research Vol. 22 (2021), pp. 13-15

マイクロスケール法による新しい小麦アレルギー対応型断層モデルの実験

佐藤 陽子・太田 尚孝

本研究では、小麦アレルギーの児童・生徒が扱うことが可能な小型の断層モデルの開発を試みた。 結果として、ムラサキイモ粉とスキムミルクから成る小型の断層モデルと、 ムラサキイモ粉とキヌア粉から成る小型の断層モデルを作ることが可能であった。 これらは、小麦アレルギーを抱えたべジアリアンの児童・生徒に有益だと考えられる。

キーワード:断層モデル・マイクロスケール法・小麦アレルギー・ベジタリアン


Vegetarian Research Vol. 21 (2020), pp. 1-8

菜食の利点と注意事項査

福永健治

菜食主義者は、タンパク質、いくつかのビタミン、ミネラルおよびn-3系高度不飽和脂肪酸の摂取が不足していると指摘されることがよくある。しかし、菜食主義者は植物性食品から摂取すべき栄養素に適した食品を選択することもでき、多くの場合、健康を効果的に改善および維持できる。菜食主義者の食事は、心血管疾患や悪性新生物などの生活習慣病の有病率の低下につながるが、一方で偏った見方もある。一部の人々は、植物性食品が体と環境に適していること、そして動物性食品は環境に悪く、不健康であると盲目的に信じて、ポピュリズムに流されている。菜食にはさまざまな背景がある。健康のために菜食を実践する場合は、菜食に興味を持ち、栄養学と食品科学についてより深く理解し、科学的な視点を持っている必要がある。 このレビューでは、菜食主義の現状と、菜食主義者が健康的な菜食主義の食事療法を実践するために不可欠な栄養素について概説する。

キーワード菜食主義・健康・植物性食品・栄養素・利益・生活習慣病


Vegetarian Research Vol. 21 (2020), pp. 9-12

含嗽剤としての緑茶と紅茶の口腔内細菌に対する殺菌・抗菌効果査

高井明徳

本研究において、緑茶と紅茶の口腔内細菌に対する殺菌・抗菌効果を寒天培地による培養法を用いて調べた。 蒸留水での含嗽により得られた口腔内細菌液と緑茶と紅茶をそれぞれ1:9の割合で混合して、2分間放置した。 これらの液を希釈して、寒天培地で培養した結果、増殖可能な細菌の生残率は緑茶で50.7%、紅茶では55.5%で、 ほぼ50%の殺菌・抗菌効果を示した。本研究結果から、緑茶と紅茶は口腔内細菌の殺菌・抗菌効果を有す含嗽液として 効果的であることが示された。

キーワード:含嗽液・緑茶・紅茶・口腔内細菌・殺菌・抗菌効果


Vegetarian Research Vol. 21 (2020), pp. 13-15

ベジタリアニズムとヒトと動物の福祉

橋本晃一

昨今、健康、環境、動物など、さまざまな視点から、ベジタリアン・ヴィーガン、または、 菜食へ移行する人たちが世界的に増加していると言われている。 国連報告書やNatureの研究や、菜食への移行のニュースを通じて、 ベジタリアニズムと人と動物の福祉の関係などについて考察する。 ヴィーガンの国連平和大使である動物学者のJane Goodallは、「気候変動もパンデミックも、 人間が動物の住処を破壊したり、動物を売り買いすることなどが要因であり、 動物に対する思いやりを持つ事が重要である」との見解を発表している。

キーワード:社会福祉・動物福祉・ウェルビーイング・マインドフルネス・サスティナビリティ


Vegetarian Research Vol. 20 (2019), pp. 1-5

都市農業による食材供給における大阪エコ農産物の役割に関する調査

阿部一博・塩崎修志・堀内昭作・勝川路子・福田ひとみ

食の安全性が期待される有機農産物や特別栽培農産物を生産している農業者の食材提供に関する認識は高く、多くの消費者は多少の割高感はあっても、これらの農産物を購入する意欲は高い。 農薬と化学肥料の使用量を慣行栽培の5割以下に削減して栽培する「大阪エコ農産物認証制度」は、認証面積と認証者数は増加していたが、エコ農産物を利用したレシピコンテストを開催することで、消費者サイドからの新展開が行われている。
キーワード:食材の安全性・エコ農産物・食材供給・有機農産物


Vegetarian Research Vol. 20 (2019), pp. 5-10

生食用ブドウに対する若年層の食味嗜好とそれに関与する要因

阿部一博・阿知波信夫・塩崎修志・堀内昭作

供試ブドウ全体の総合評価は3.58であり、ブドウが若年層に好まれる果物であることを明らかにした。男女間では男性で甘味と総合の相関係数が高く、女性と比べ男性がより強く甘味を評価の基準としていることを明らかにした。また、官能検査を行った18品種の中で総合評価が最も高かったのは'巨峰'であり、最も低かったのは'マニキュアフィンガー'であった。ブドウを果皮の色で黒と赤ならびに緑に分類し比較すると緑ブドウにおける甘味と総合の相関係数が他の2色に比べて低いことから消費者は緑ブドウに対し甘味以外の要因を求めることが明らかになった。総合評価は果皮色黒のグループが最も高く、果皮色赤のグループが最も低くかった。3色それぞれにおいて広く普及し、実験回数が多かった品種(黒:'巨峰'、赤:'甲斐路'、緑:'マスカットオブアレキサンドリア')では、平均価格以上の果実の総合評価が高く、これらの品種では値段の差による食味の差も認められた。ブドウ全体としては値段の高いブドウほど甘味と総合の相関係数が低くなる傾向があった。
キーワード:官能検査・食材・食味嗜好性・生食用ブドウ・若年層


Vegetarian Research Vol. 20 (2019), pp. 11-15

クロレラ食品が葉酸代謝に及ぼす影響

藤島雅基

本研究では、成人男性3名を対象にMTHFR677C> T多型の特性を踏まえ、クロレラ食品8g/日の継続摂取が葉酸、ビタミンB12、総ホモシステインの血中濃度と葉酸-メチオニン代謝系の遺伝子発現への影響を評価することを目的に飲用試験を1年間実施した。結果、クロレラ食品の継続摂取はMTHFR677C>T多型に関わらず血清葉酸、ビタミンB12濃度の上昇に有益で、小腸で葉酸吸収を担うプロトン共役葉酸輸送体のSLC46α1、リソソーム内から細胞質へビタミンB12の輸送を担うABCD4、ホモシステインをシスタチオニンへ変換する酵素のCBSや多くの葉酸-メチオニン代謝系の遺伝子発現を亢進し、葉酸代謝の効率を上昇することが示唆された。
キーワード:クロレラ・食事性葉酸・MTHFR


Vegetarian Research Vol. 20 (2019), pp. 17-22

ベジタリアンのための食用可能な理科実験 −レインボーハーブティーを用いたマイクロスケールアイスキャンデーの開発と学習効果の調査−

佐藤陽子・太田尚孝

本研究では、食材を扱う理科実験におけるベジタリアン対応型教材の開発を試みた。学校教育の現場では、従来からアイスキャンデーの作成実験が行われている。だが、50分間の授業時間内に原理の解説と実験を同時に行うことは困難であった。そこで、従来よりも短時間で作成可能な「レインボーハーブティー[1]」を用いたアイスキャンデーを開発した。本研究で、マイクロスケール化を試みたところ実験時間の短縮が可能であった。さらに、中高一貫教育校における中学校2年生の発展学習で、その有効性を検証した。ここでは、「レインボーハーブティー[1]」を用いたマイクロスケールアイスキャンデーの作成とアンケート調査を実施した。結果として、実験を通して質量パーセント濃度,密度,指示薬について理解できた生徒が有意に多かった。
キーワード:ベジタリアン・理科教育・キッチンサイエンス・凝固点降下・マイクロスケール実験・レインボーハーブティーアイスキャンデー

Vegetarian Research Vol. 20 (2019), pp. 23-26

若年層の食材に対する嗜好性とベジタリアンの認識に関する調査

阿部一博・塩崎修志・堀内昭作・勝川路子・福田ひとみ

調査対象の20項目の食材の中で、様々な理由で嫌われている食材があったが、偏食されることなく摂食されていることが明らかとなった。 果実:4.41の嗜好性が最も高く、米:4.39、卵:4.36、鶏肉:4.36が高かった。最も低かったのはマメ類:3.64で、牛乳:3.73、ベーコン:3.95が低かった。野菜の中では、ゴーヤ:110名が最も嫌われ、セロリー:94、トマト:65が嫌われた。 忌避される食材は少なかったが、エビ・カニを忌避する対象者は7名で、卵は2名であり、その理由はアレルギーであり、牛乳を避ける対象者は6名で、理由は体調が悪くなるためであった。 動物性食品を避けるベジタリアンの認識については、4.15の評点であり認識度は高かったが、調査対象者中にはベジタリアンはいなかった。
キーワード:若年層・アンケート調査・食材・嗜好性・ベジタリアンの認識


Vegetarian Research Vol. 20 (2019), pp. 27-29

ベジタリアンのための食用可能な理科実験―信号反応によるマイクロスケールコンニャクの作成―

佐藤陽子・太田尚孝

本研究の主目的は、ベジタリアンの生徒のための新しい教材の開発である。ここでは、ベジタリアン食として知られているコンニャクの製造に水酸化カルシウムが用いられていることに着目して新しい教材の開発を試みた。結果として、高等学校の化学でゲルについて指導をする際に、青色2号(インジゴカルミン)、グルコース、水酸化カルシウムを用いて信号反応を行いながら短時間でマイクロスケールのコンニャクを作成する方法を見いだした。
キーワード:化学実験・信号反応・ベジタリアン・青色2号(インジゴカルミン)・マイクロスケール・コンニャク


Vegetarian Research Vol. 19 (2018), pp. 1-7

成人男性べジタリアンダイエットがメタボリックシンドロームリスク要因に及ぼす影響

嵐雅子・仲本桂子・片山美香子・岩井達・渡辺満利子

【緒言】成人男性ベジタリアンダイエット(VD:ラクト・オボベジタリアン)群と対照群におけるMetS発症リスク要因の比較検討を目的とした。
【方法】調査対象:病院男子職員57名。本対象は某病院カフェテリアにおいてVDを1日1食は摂取する人々である。 対照群は某企業に勤務する男子職員354名をランダムに60名抽出した。 対照群は一般食を摂取する集団である。調査方法:2009年12月〜2010年2月、食事調査(FFQW82)を実施し、 臨床データは職員健康診断結果を受けた。
【結果】VD群の年齢44.5歳、対照群は50.0歳。VD群の腹囲は79.3±7.8cm、対照群90.2cmであり、有意に低値を示した (p<0.001) 。 同様にBMIはVD群21.4±4.8、対照群24.7±2.3であり有意に低値を示した(p<0.001)。 臨床検査データは、γ―GTPはVD群24.2±14.4、対照群42.6±21.0であり有意に低値を示した(p<0.001)。 また、エネルギー摂取量はVD群1763±234Kcal対照群1711±169Kcalであり両群に差は見られなかったが、 有意に高値を示した項目は、植物性たんぱく質、食物繊維でありVD群41.1±18.4g、対照群34.3±3.8g、 同12.9±2.8g、11.4±1.9gであった(いずれもp<0.01)。
【考察】VDは対照群に比べ、腹囲、BMIを良好に維持し、MetSリスク要因を軽減することが示唆された。
キーワード:MetS(メタボリックシンドローム)・ベジタリアンダイエット・BMI


Vegetarian Research Vol. 19 (2018), pp. 9-17

全寮制中高生のベジタリアンダイエットが栄養摂取・体格に及ぼす影響

嵐 雅子・岩井 達・渡辺 満利子

本研究は、中高生のベジタリアンダイエットが栄養摂取、体格に及ぼす影響を検討した。2008年4月、同意を得た中高生423名を対象に、体格、食事・生活習慣調査を行った。その結果、栄養素摂取状況は、同年代の国民健康・栄養調査結果に比べ、カリウム、マグネシウム、食物繊維、鉄摂取量は上回り、身長・体重は全国平均値と同等であった。各学年別男子のBMI平均値は中学1年のBMI18.7から漸次増加し、高校3年では、BMI22.2を示し、ベジタリアンダイエットの摂取期間が長い上級学年での体格が良好に維持されていた。高校生男子のやせ(18.5> BMI)は17.7%、肥満(BMI≧25)は12.7%であり、全国平均と同程度であった。全寮制中高生におけるラクト・オボ・ベジタリアンダイエットは、成長期の体格を良好に維持していることが認められ、一般中高生の食事摂取状況と比較し、エネルギー及び栄養素摂取量は明らかに優位にあることを認めた。しかし、一方で一般中高生と同様に現体型の自己評価に関しては体型誤認が存在し、BMIへの影響が示唆された。
キーワード:全寮制・ベジタリアンダイエット・中高生・栄養摂取・体格


Vegetarian Research Vol. 19 (2018), pp. 19-27

ベジタリアンダイエットがエクオール産生能・腸内細菌に及ぼす影響について−Pilot Study−

嵐雅子・大森静絵・遠藤咲耶・岩井達

本研究は、ベジタリアンダイエット(Vegetarian Diet:VD)がエクオール産生能・腸内細菌に及ぼす影響について検討した。 2017年3月〜8月、同意を得た某女子大生19名を対象に、身長、体重、食物摂取頻度調査(FFQW82)、採便、採尿を介入前後で実施した。 対象をVD群、対照群に分け、VD群は4か月ベジタリアンダイエットの食生活を実践した。 その結果、栄養素摂取状況は、介入前は同様であり、介入後はVD群が動物性たんぱく質が有意に減少した(p<0.001)。 また、腸内細菌叢とエクオール産生の比較では、VD群では総菌数、Bifidobacteriumにおいて有意に高値を示した(P<0.01)。 対照群で有意に高値を示した項目は総菌数(P<0.001)、Clostridium菌(P<0.05)であった。 また、VD群の介入後のエクオール産生能は55.6%であった。 介入前後エクオール産生比較では介入後に新たにエクオールが産生できるようになったものはVD群で3例、対照群はなしであった。 VD群における新エクオール産生群の介入前後のエネルギー及び栄養素等摂取量の比較では魚類、 肉類由来のたんぱく質で有意に低値を示した(P<0.01)介入後VD群において腸内環境が改善され、 エクオールの産生が認められた。VDが腸内細菌を増加させ、エクオール産生能を高める可能性があることが示唆された。
キーワード:ベジタリアンダイエット・エクオール・大豆イソフラボン・若年女性


Vegetarian Research Vol. 19 (2018), pp. 31-33

ベジタリアニズムの視点から考察する動物倫理学の動向

橋本 晃一

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、海外からのベジタリアン対応や、アニマルウェルフェア(動物の福祉)に対する意識が強まっている。  動物の倫理的な配慮に関心が高まっていると思えるようなニュースを紹介しながら、従来の動物倫理学における動物の権利論や動物の解放論、また、動物の福祉に関連する議論においての研究を整理し、今後の動物への配慮をどのように考えていけばよいのかという考えを論じる。  ベジタリアニズムの視点から、特にピーター・シンガーの功利主義的立場からの「苦痛への配慮」を重点に置き、そのルーツとなるジェレミ・ベンサムの思想についても考察することにした。
キーワード:ベジタリアニズム・ビーガニズム・動物倫理・動物の権利・動物の解放運動・動物の福祉・功利主義


Vegetarian Research Vol. 17 (2016), pp. 1-7

最新ベジタリアン栄養学―大豆は良好なタンパク源―

土田満*

 動物性食品の摂取を控えるベジタリアンにとって、大豆は主要なタンパク質源になっている。 国連食料農業機関(FAO)は、2016年を国際マメ年とし、肉を減らして、豆を増やそうという運動を始めている。 本著では、大豆のタンパク質とその他の成分、大豆・大豆食品の健康効果、世界の長寿地域における大豆摂取、 世界の人口問題と食料問題における大豆への期待、そして大豆の健康効果に疑問を投げかける話題を論じている。 世界が抱える環境、健康問題の解決に向けて、日本の大豆食文化を積極的に世界に発信するとともに、 新しい発想による大豆の加工や料理の開発が期待される。

*愛知みずほ大学大学院


Vegetarian Research Vol. 17 (2016), pp. 9-16

理科教育の見地からの新しい菜食教育の試み ―キッチンサイエンスによる科学的な野菜サラダ作り―

佐藤陽子*・太田尚孝

 本研究では、中学生に対して、長期的な観点からの健康増進を鑑みた理科教育を行うとともに、  国際ベジタリアン連合(IVU)が定めるベジタリアン、ビーガン、ラクト・ベジタリアン、  ラクト・オボ・ベジタリアンについて知る機会を設ける方法を検討した。  結果として、理科教育が可能な野菜サラダ、カッテージチーズ、ポーチドエッグ、ドレッシングを考案した。  ここでは、植物のなかま分けとタンパク質の変性及び、極性溶媒と無極性溶媒の特徴に関する学習が可能な教材を開発した。  そして、本研究で開発した教材を用いた授業を実践した結果、中学校2年生のベジタリアン、ビーガン、  ラクト・ベジタリアン、ラクト・オボ・ベジタリアンに対する認知度が有意に上昇した。

*東京理科大学


Vegetarian Research Vol. 17 (2016), pp. 17-18

理科教育の見地からの新しい菜食教育の試み ―キッチンサイエンスによるビーガンのティータイム―

佐藤陽子*・太田尚孝

 本研究では、理科教育の観点からの菜食教育の実践方法について検討した。結果として、ビーガンが試食可能な教材を開発することに成功した。  具体的には、花のつくり,葉脈,カエルの卵割について学習することが可能な飲料と茶菓子を導入することが可能であった。

*東京理科大学


Vegetarian Research Vol. 17 (2016), pp. 21-23

食材を扱う化学実験におけるアレルギー対応型教材の開発 ―卵代替食材を用いた新しい乳化型調味料の開発―

佐藤陽子*・太田尚孝

 本研究では、食材を扱う化学実験における新しいアレルギー対応型教材を開発した。 ここでは、鶏卵を用いたマヨネーズの作成実験に代わる教材として「豆乳・抹茶を用いた乳化型調味料」を 二点提案することができた。 これらは、イムノクロマトグラフ法により鶏卵の主要アレルゲンであるオボアルブミンに対して陰性を示した。 そのため、この手法が周知されると、現在よりも安全に実施できる可能性を高めることが示唆される。

*東京理科大学


Vegetarian Research Vol. 15 (2016). pp. 1-12

Creating a New Vegan Diet Culture through the Restoration of Washoku (Japanese Cuisine): a Proposal for “The Balance Sheet of Food and Life” Based on Yin-Yang Theory

和食の復権と新しいヴィーガン食文化の創造 ‐陰陽 理論による「食といのちのバランスシート」


Yumiko Otani (Yumiko Tubu-Tubu)*

大谷ゆみこ(つぶつぶグランマ・ゆみこ)*

A traditional grain based diet (Tubu-Tubu Future Food) suggests a new approach to vegan and vegetarian cuisine. Based on the wisdom and techniques of Washoku (Japanese cuisine), which has survived for over twenty centuries, this diet was creatively constructed without destroying the system of Washoku. It enables not only a physiologically but also a psychologically balanced, healthy, and morally rich vegan life by correcting unbalanced dietary practices and reexamining the adverse effects of focusing on modern dietetics. “The Balance Sheet of Food and Life” is the reference guideline for healthy food and a healthy body and it shows the yin-yang and acid-alkali balance.
Keywords: Balance sheet of food and life, Yin-yang theory, Vegan, Vegetarian, Traditional grain based diet (Tubu-Tubu Future Food)

 紀元前からの長年に渡って歴史を生き抜いてきた和食 の知恵と技法を基にして、そのシステムは崩さずに創 造的に構築した、新しいヴィーガン・ベジタリアン料 理の提案が雑穀菜食(未来食つぶつぶ)である。食と 体の健康を推し量る指針の一つとされている、陰陽バ ランスと酸アルカリバランスをシンプルに表す「食と いのちのバランスシート」によって自らの食生活の偏 りを修正し、近代栄養学一辺倒の弊害を見直し、生理 的のみならず心理的にもバランスのとれた健康で心豊 かなヴィーガン生活の実践を目指す。

*フゥ未来生活研究所CEO、未来食セミナー主宰、つぶつ ぶ菜食創始者


Vegetarian Research Vol. 15 (2014), pp. 3-6

ベジタリアン食に関する2014年における医学的論文についての考察

宮城智央*

 2014年におけるベジタリアン食に関する英語の医学的論文を検討した。Pubmedにて検索し、  ベジタリアン食が重要な内容である論文を55本得た。それらのうちから重要な内容を示唆する5本の論文を選出し、  それらを考察した。2014年においても、これまでの医学的見解に著明な変更はなく、  ビタミンB12などの栄養摂取を適切に行うことでベジタリアン食は健康に益すると考えられた。

*琉球大学医学部


Vegetarian Research Vol. 14 (2013), pp. 1-6

タマネギ実生根端細胞を用いる小核試験による遺伝毒性物質の検出

高井明徳*

 小核試験は、染色体異常に起因して生じる小核を指標とする遺伝毒性試験の一つとしてその簡便性と高い再現性で放射線や化学物質、環境汚染における遺伝毒性評価に広く適用されている。植物を用いる方法は、哺乳類などの動物を用いる方法に比べ簡便に行え、近年その応用が進み、哺乳類を用いる方法の代替としても期待されている。本稿ではタマネギの実生根端細胞を用いる小核試験について解説する。

*大阪信愛女学院短期大学


Vegetarian Research Vol. 13 (2012), pp. 1-4

Characteristics of Pickles Made from Eggplant (Solanum melongena L. cv. ‘Mizunasu’), a Vegetable Indigenous to Osaka(大阪府在来品種‘水ナス’漬物の食味特性の解明)

嘉悦佳子*・阿部一博

 大阪府在来品種である‘水ナス’は大阪府の泉州地域を中心に栽培されており、‘水ナス’の漬物は消費者に人気がある。そこで、本研究では、‘水ナス’の調味液漬け(以下、液漬け)およびぬか漬けについて官能検査を行い、一般に食されている‘千両’ナスの漬物と比較することで、‘水ナス’漬物の食味特性を解明した。
 ‘千両’ナス液漬けと比較して‘水ナス’液漬けは、外観、食感および甘味が高く、酸味が低く、旨味は同等であった。‘水ナス’液漬けの総合評価は、‘千両’ナス液漬けより高く、外観、食感および旨味と相関があった。つぎに、‘千両’ナスぬか漬けと比較して‘水ナス’ぬか漬けは、外観、食感、甘味および旨味が高く、酸味が低かった。‘水ナス’ぬか漬けの総合評価は、‘千両’ナスぬか漬けより高く、食感、甘味および旨味と相関があった。‘水ナス’と‘千両’ナスともに、ぬか漬けより液漬けの総合評価が高く人気が高かった。また、‘水ナス’の漬物は男性よりも女性に人気が高かった。
 以上のように、‘水ナス’漬物は‘千両’ナス漬物より外観と食感が優れ、甘味と旨味が強く、酸味が弱いため、総合的においしく消費者に人気があると考えられた。

*地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所


Vegetarian Research Vol. 13 (2012), pp. 5-8

異なる形状のカットキャベツの微生物密度に対する強酸性電解水と超高速振動の併用処理効果

阿部一博*・嘉悦佳子・阿知波信夫

 本研究では,形状が異なるカットキャベツ(2cm角切片,1cm角切片,千切り切片)に対する強酸性電解水と他の処理(超高速振動あるいは細胞間隙の置換)の併用処理による殺菌効果を調べた。電解水による除菌効果は,2cm角切片<1cm角切片<千切り切片であり,除菌効果は切片のクチクラ層の殺菌に因るものではなく,切片の切断面における殺菌効果に因るものであることを明らかにした。除菌効果は,電解水の浸漬時に超高速振動を加えるか切片の細胞間隙の気相を電解水で置換することによって高まることを明らかにした。

*大阪府立大学大学院生命環境科学研究科


Vegetarian Research Vol. 13 (2012), pp. 9-13

モンゴル国都市部における動物性食品摂取状況とベジタリアン

中川雅博*・高井明徳・垣本充

 現在のモンゴル国における食生活状況を把握する目的で、動物性食品の摂取頻度に関する調査をウランバートルなど都市部の140名(男性59名;女性71名;無回答10名)を対象に、2010年6〜12月にアンケート調査を行った。調査対象の年齢は29.5 ± 10.6歳で16〜63歳の間に分布していた。今回の結果より、畜肉類の日常的に摂取しているものは80%を超え、わが国の先行調査の結果に比べてその割合は顕著に高かった。また、畜肉類を毎日摂取しているものは性別に関係なく高かった。1.5%がラクト・オボ・ベジタリアンで、週に1日程度食べるものも含めると、5.8%がラクト・オボ・ベジタリアンであり、8.8%が畜肉類を食べないノン・ミート・イーターであることが示された。畜肉類を食べないようにしている者は32.9%、鶏肉で15.7%、魚介類で17.9%、鶏卵で7.1%、牛乳・乳製品で4.3%であった。また、畜肉類を日常的に摂取しない者の割合は男性のほうで大きかった。畜肉類など動物性食品を食べないようにしている理由は健康のためが多かった(46.4%)。首都ウランバートルでは、ベジタリアン食材も入手可能であり、ノンミートイーターとしての食生活を選択する基盤は整っているにもかかわらず、日常的な畜肉摂取の行動と畜肉摂取を避けようとする意識の乖離が見られた。

*日本国際湿地保全連合


Vegetarian Research Vol. 13 (2012), pp. 15-18

異なるブランチング処理が野菜の水溶性成分含量に及ぼす影響

阿部一博*・嘉悦佳子・阿知波信夫

 本研究では,形状が異なるカットキャベツ(2cm角切片,1cm角切片,千切り切片)に対する強酸性電解水と  他の処理(超高速振動あるいは細胞間隙の置換)の併用処理による殺菌効果を調べた。  電解水による除菌効果は,2cm角切片<1cm角切片<千切り切片であり,  除菌効果は切片のクチクラ層の殺菌に因るものではなく,  切片の切断面における殺菌効果に因るものであることを明らかにした。  除菌効果は,電解水の浸漬時に超高速振動を加えるか切片の細胞間隙の気相を電解水で置換することによって高まることを明らかにした。

*大阪府立大学大学院生命環境科学研究科


Vegetarian Research Vol. 12 (2011), pp. 1-6

栽培法の差異が水ナス果実中の硝酸イオン濃度に及ぼす影響

嘉悦佳子*・森川信也・磯部武志・中村謙治・阿部一博

大阪府内在来野菜である水ナスを@有機肥料を施用した養液培地耕(以下、有機培地耕区とする) A無機肥料を施用した養液培地耕(以下、無機培地耕区とする)B無機肥料を施用した湛液型水耕 (以下、無機水耕区とする)で栽培し、収穫果数、果実重量、品質および果実中の硝酸イオン濃度を測定し、 養液栽培における肥料や培地の差異が水ナス果実中の硝酸イオン濃度に及ぼす影響を調べた。
1株あたりの収穫果数は、無機水耕区と無機培地耕区が約80個と多く、有機培地耕区は約20個で最も少なかった。 収穫した水ナス果実の硝酸イオン濃度は、全試験区で果皮よりも果肉で高かった。試験区別の果肉に含まれる 硝酸イオン濃度は、無機水耕区が最も高く、ついで、無機培地耕区であり、有機培地耕区が最も少なかった。 これは、果皮でも同様の傾向であった。
無機培地耕区と無機水耕区を比較すると、軽石の一種であるパミスを培地として用いた無機培地耕区は、 無機水耕区と同等に栽培でき、果実中の硝酸イオン濃度が低減した。一方、有機肥料を施用した有機培地耕区は、 無機肥料を施用した他の2試験区と比較して生育は劣ったが、著しく果実中の硝酸イオン濃度が低減した。
したがって、無機肥料の代わりに有機肥料を使用すること、および、固形培地を使用することで、 水ナス果実中の硝酸イオン濃度が低減する可能性が示唆された。

*大阪府環境農林水産総合研究所


Vegetarian Research Vol. 12 (2011), pp. 7-14

葉菜類の品質劣化時における遊離アミノ酸含量と総クロロフィル含量の変化に関する研究

阿部一博*・門口茜・嘉悦佳子・阿知波信夫

遊離アミノ酸は食味と関わりの強い内容成分のひとつであり、品質評価において重要な役割を果たす。 また、緑色野菜の品質劣化時にはクロロフィル含量の減少による黄化がみられるが、 これは遊離アミノ酸含量と並んで青果物の品質評価において重要な指標である。 本研究では、数種類の緑色野菜を用いて、品質評価において重要な指標である総遊離アミノ酸含量と 総クロロフィル含量の品質劣化時における変化を調べ、それらの関連性について明らかにしようとした。 生体重100gあたりの総クロロフィル含量が30mg以上で緑色を呈していた器官{ハクサイの緑色部位(葉身)、 大阪シロナの緑色部位(葉身)、カイワレダイコンの緑色部位(子葉)、チシャの緑色部位(外葉)、シュンギク、 セロリの緑色部位(葉身)、パセリ、ホウレンソウ、青ネギの緑色部位(葉身)、メタデ、アオジソ}では、 総クロロフィル含量の減少に伴って、総遊離アミノ酸含量が増加するが、 生体重100gあたりの総クロロフィル含量が5mg以下で白色を呈していた器官{ハクサイの白色部位(葉柄)、 大阪シロナの白色部位(葉柄)、カイワレダイコンの白色部位(胚軸)、チシャの白色部位(内葉)、 セロリの白色部位(葉柄)、青ネギの白色部位(葉鞘)}では、 貯蔵中の総遊離アミノ酸含量および総クロロフィル含量はほとんど変わらないことを明らかにした。 これらの結果から、葉菜類の貯蔵中の総クロロフィル含量の減少と総遊離アミノ酸の増加には何らかの関連があると考えられた。

*大阪府立大学大学院生命環境科学研究科


Vegetarian Research Vol. 12 (2011), pp. 1-6

学生と一般市民の環境中の発がん物質とがんに関する知識と意識および食生活との関係

高井明徳*・垣本充

本研究は男女大学生および一般市民の環境中の発がん物質やがんに関する知識 およびがんに対する意識と行動の実態を明らかにすることを目的として、 1996年に246名の市民(学生162名、社会人84名)を対象に、 2007年に115名の女子大生を対象にアンケート調査方式により行った。 各質問において、1996年の学生と社会人、2007年の学生の間で、質問項目の回答率については違いが認められたが、 知識や意識の傾向、具体的には「はい」の回答率の高い項目は全体的に非常に似ていた。 1996年と2007年の女子学生の結果もほとんど差がなかった。がんについての関心は高く、 また、がんについての心配やがんが先のことではないという意識は高いものの、 環境中の発がん物質や発がんの機構についての知識は高いとは言えず、 がんにならない生活の実践もほとんどなされていない状況であった。 発がん物質やがんに関する知識や意識、がんにならないための生活実践は相互に高い関連性を示し、 とくに、がんと生活との関わりを認識している人は、知識や意識が高く、 がんにならないための生活実践を行っていることが示され、年齢が高くなるほど顕著であった。 性別による差はほとんど認められなかった。菜食中心の人はがんにならない生活を心がけ、 食生活を重視し、菜食を心がけ、肉類を控えていることが示された。

*大阪信愛女学院短期大学


Vegetarian Research Vol. 11 (2010), pp. 1-9

日本人青年期女性におけるベジタリアンダイエットが栄養摂取状況及び骨密度に及ぼす影響

嵐雅子*・渡辺満利子・横塚昌子・西川恵梨子・岩井達

研究目的:本研究は、日本人青年期女性におけるベジタリアンダイエットが 栄養摂取状況及び骨密度に及ぼす影響について検討することを目的とした。 研究方法:対象はVDを摂取する大学生女子をVD群(n=52)とし、 一般食を摂取する大学生女子を対照群 (n=52)とした。 VD群は食事調査(FFQW82)、学生健康診断結果、骨密度(踵骨)測定結果を受けた。 対照群は食事調査(FFQW82)、及び身長・体重測定結果を受けた。 研究結果:VD群は、対照群に比べ、昼食および夕食エネルギー、植物性たんぱく質、 食物繊維は有意に高値を示し(いずれもp<0.001)、マグネシウム、鉄(いずれもp<0.05)は有意に高値であった。 また植物性たんぱく質比は有意に高値を示した(p<0.001)。VDが食物繊維、マグネシウム、 鉄の摂取に有用であることが示唆された。 骨密度高値群では、同低値群に比べ、大豆及び大豆製品の摂取量は有意に高値であり(p<0.05)、 VDにおける大豆摂取が骨密度を良好に維持していることが示唆された。骨密度を従属変数とし、 食品群別エネルギー摂取量を独立変数として分析した結果、骨密度への寄与率の高い食品として、 大豆及び大豆製品が抽出された(β=0.733、p<0.001)。また骨密度への寄与率を下げる食品として油脂類が抽出された (β=―0.466、p<0.01)。 結論:日本人青年期女性を対象とする本研究において、 VDが青年期女性の栄養摂取状況及び骨密度を良好に維持していることが認められた。

*東京衛生病院


Vegetarian Research Vol. 11 (2010), pp. 11-14

農学を専攻した若年層が持つ彩り野菜に対する認識と摂食経験ならびに品質評価要因に関するアンケート調査結果

阿部一博・塩崎修志・嘉悦佳子・島昭二・木戸啓仁・下山亜美・岡井康二・阿知波信夫

質問事項を記載した用紙への記入による回答によって、 農学を学ぶ学生が有する彩り野菜の摂食経験や認識状況を調査した。 [摂食経験]対象とした野菜等の名称の大部分を認識し、摂食経験があるが、 木の芽とキク花は飾りとして見ており、摂食経験者は少なかった。 [嗜好性]嗜好性が高い野菜は、ミツバ、シソ、スダチ、カイワレであり、 嗜好性が低い野菜は、芽タデとパセリであった。 [品質評価項目]品質評価上重要な要因ならびに品目は、色彩(ミツバ、芽タデ、パセリ)、 形状(キク花、カイワレ)、香気(ミツバ、シソ、パセリ、スダチ)、味(ミツバ、シソ、スダチ、カイワレ)であった。 対象者達は、彩り野菜等の品質特性を理解し、様々な料理で摂食して、 食品上は重要であると認識していることが明らかとなった。

*大阪府立大学大学院生命環境科学研究科


Vegetarian Research Vol. 11 (2010), pp. 15-22

最新の米国ベジタリアン栄養学 〜英国のベジタリアン研究(EPIC−Oxford)とも比較して

仲本桂子

要旨 『適切に用意された菜食は健康的で、栄養的にも十分であり、 ある種の病気の予防や治療に有効である』という見解を米国栄養士会は出している。 適切な献立のための鍵となる栄養素はたんぱく質、n-3系脂肪酸、鉄、亜鉛、ヨウ素、カルシウム、ビタミンD、ビタミンB12である。 たんぱく質は、様々な食品を摂取しエネルギーを十分摂取することで必要な質と量を満たすことがわかってきた。 n-3系脂肪酸、ビタミンD、ビタミンB12は供給源を意識して摂取することで、十分な量を摂れる。 また、鉄、亜鉛、カルシウムは調理法などを工夫することで生物的利用能を高くすることができる。 ヨウ素については、海藻類を適量摂取する日本人ベジタリアンでは不足の心配はあまりないと考えられる。 サプリメントや強化食品も含めた菜食により、乳幼児期、学童期、思春期、妊娠期、授乳期も十分な栄養を摂取することができる。 米国のアドベンチスト死亡調査(Adventist Mortality Study)によると、 肉を週に1回以上食べる人は全く食べない人に比較して死亡比が0.88、 アドベンチスト健康調査(Adventist Health Study)では0.85であった。 一方、英国の研究では肉を全く食べない群と健康志向の高い、 肉を週に1回以上食べる群との間で死亡率比に大きな差は見られなかったが、 これは菜食の種類など生活習慣も含めた環境要因によるものだと考えられる。 菜食は虚血性心疾患による死亡率の低下と関連がある。 また、ベジタリアンは非ベジタリアンよりもLDLコレステロール値や血圧が低く、高血圧、II型糖尿病の罹患率が低い。 さらに、ベジタリアンはBMIが低く、ほとんどのがんの罹患率も低い傾向にある。 鍵となる栄養素に気をつけた菜食をすることで、菜食は生活習慣病の予防にますます有益なものとなる。

*三育フーズ株式会社